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片山社会保険労務士事務所
社会保険労務士 片山 展成

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● 定期代で支払う通勤手当
● 就業規則の改定 
● 整理解雇の基準 
● 人事異動 
● 年次有給休暇の「時間単位」での取得
● 2010年4月からの36協定特別条項 
● 労働時間と賃金の端数処理について
● 雇用保険の失業給付と離職理由について


 ● 定期代で支払う通勤手当

  マイカー通勤が主体の企業である場合は別ですが、公共交通機関が発達した地域にある際は、通勤手当を「公共交通機関の利用」を前提として支給しているケースが多いでしょう。公共交通機関を利用して通勤する場合、その交通機関の運営主体にもよりますが、定期券を購入して利用する方が安価である場合には、通勤定期代をもって通勤手当の額としている企業も少なくないと思われます。その通勤定期券ですが、3カ月ないし6カ月という期間で購入できることもあり、この場合の通勤手当はどのように支払えばよいのでしょうか。

1.毎月支払うのが原則
賃金は、労働基準法によって、「毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」と定められています。「毎月払いの原則」と「一定期日払いの原則」です。
この原則に対しての例外は、「臨時に支払われる賃金、賞与その他に準ずるもので命令で定める賃金」であり、たとえば次のとおりです。
@ 1カ月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
A 1カ月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
B 1カ月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当

通勤手当はこの例外には該当しないため、原則どおり毎月1回以上、一定の期日に支払うべき賃金、ということになります。

たとえば4月から6月までの3カ月の定期券を購入する場合、3カ月分をまとめて支払うため、4月に一括して支給する方が、労働者にとって都合がよいのではないか、という疑問もわきます。
企業によっては、通勤手当を後払いとしているケースもあると思われますが、この「通勤定期代の一括払い」を6月に行う「後払い」とした場合は、毎月払いの原則に触れるものと考えてよいでしょう。しかし、4月にまとめて支給する「前払い」方式の場合には、「違法」とまでは言えないように思われます。

2.労働者にとって不利ではないか?
通勤定期券の料金は、通常1カ月分よりも3月分、6カ月分がある場合には3カ月分よりも6カ月分の方が割安に設定されています。3カ月分の定期券があるとして、その全額を3で割った金額を各月の通勤手当として支払う場合、通常の1カ月分を支払うよりも、労働者にとっては不利ではないのか、という疑問もあります。

しかし、通勤手当はもともと労働基準法においては必ずしも支給義務のあるものではありません。企業の中には、「通勤費用の○割を支払う」定めをしている場合もあります。就業規則において定めをしてあり、その定めに従って支給していれば良いものです。したがって、「割安な」支給方法を採用しても違法ではありません。


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 ● 就業規則の改定

  来年(2010、平成22年)4月1日から、改正労働基準法が施行されます。就業規則の絶対的必要記載事項(必ず記載しなければならない事項)である、賃金や、休暇に関する法令改正であるため、就業規則の改定を伴います。このほかにも、育児介護休業法の改正もあるので、来年は就業規程の整備に手をかけなければいけない年になるでしょう。詳細について未だ明らかではない部分も残っていますが、準備を進めておく必要はあります。就業規則の記載事項は、法改正にのみ対応していればそれで済む、というものでもありません。時代の変遷に伴って変化する環境や世論の動向にも対応していく必要のある部分があります。たとえば、懲戒処分というものは就業規則の規定に根拠がない場合には行うことができない、という立場が主流であるため、パワー・ハラスメントによる懲戒処分などもできるように規定しなければ、職場の規律を維持することができなくなる可能性もあります。法改正に従って就業規程類の改定を実施する際には、他の条文も見直してみることが、有効であるときもあるでしょう。

1. 1カ月60時間を超える時間外労働をさせる場合

法定労働時間(1日について8時間、1週間について40時間が原則)を超える労働については、現行、25%の割増賃金を支払う必要があります。
それが、以下のように変わります。
@ 1カ月について60時間を超える時間外労働をさせた場合には、その60時間を超えた部分について、50%以上の割増賃金を支払わなければならない。
(中小企業に対する猶予措置あり)
A 1カ月60時間を超える時間外労働に対する「25%を超える部分の割増賃金」に代えて、休暇を代替付与(「代替休暇」)することができる。
(労使協定の締結を要する)

2. 「限度基準」を超える時間外労働をさせる場合

たとえば1カ月45時間(1年変形の場合は42時間)を超える時間外労働をさせた場合に、現行の割増賃金率25%を超える率の割増賃金を支払う努力をする必要があります。これには中小企業に対する猶予措置はありません。
努力義務であるため、現行の最低基準である25%で支払っても違法ではないこととなりますが、法の趣旨から推測するならば、労使間で25%を超える割増賃金率で支払うことができるか否かの協議を行い、使用者側として検討した結果、法定の25%を超える割増賃金率を設定できるか否かについての検討経緯や結果を記録する、等の措置も必要である、とも考えられます。

36協定を締結する際に「特別条項」を設ける場合、この限度基準を超える時間外労働にかかる割増賃金率を、締結し、記載しなければならない、ということになります。

3.時間単位の年次有給休暇の取得が可能となる

年次有給休暇は「日単位」で付与するものであり、例外的に「半日年休」の取得も可能とされています。
この「日単位」の原則は変わらないものと思われますが、「時間単位」で取得できるようにもなります。官公庁においては以前より広く行われてきたことですが、近年のW.L.B.(ワーク・ライフ・バランス)の観点からも有効活用が可能であるかも知れませんし、前述の「代替休暇」との併用も可能となる様子です。

就業規則の規定のほかに労使協定に基づく必要があります。

4. 育児にかかる短時間勤務制度の強化

3歳に満たない子を養育する労働者が申し出た場合、所定労働時間を短縮してこの養育を容易にする措置を講じなければならない、ということについて義務化されます。

業務の性質または業務の実施体制に照らして(所定労働時間が6時間以下の場合も)、その短縮措置が「困難な業務」に該当する場合には、同短縮措置の対象外とすることができるようです。この場合には、書面による労使協定によって所定の事項を定める必要があります。

このことだけではなく、近年の労働関係法令においては、労使協定の重要性が強調されています。
労使協定について整理し直してみるのも、必要なことかも知れません。


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 ● 整理解雇の基準

  「解雇」は、労働契約の、使用者側からの一方的な解除のことをいいます、主なものには「普通解雇」「整理解雇」「懲戒解雇」があり、そのほかにも解雇となり得るものに、「更新期間契約の更新拒否」や「採用内定取消」などがあります。また、形式上「解雇」という形を取らない場合であっても、度重なる退職の勧奨や、嫌がらせなどによる事実上の職場からの放逐が、解雇と見なされる場合もあります。継続する不況の中では、事業の縮小や廃止に伴って人員整理を行わなければならない場合も想定されます。今回は「整理解雇」を取り上げます。

1. 整理解雇の意義

整理解雇は、大きなくくりとしては普通解雇の一つと言えますが、その中でも特に、企業経営が悪化し財政状態が悪いために、一部の労働者に対して人員の整理を行うためになす解雇のことを言います。

「整理される」労働者にとっては、企業が生き残るために自らが犠牲になるという、場合によっては過酷なものです。反面、使用者の立場からすれば、一部の従業員の犠牲により、より多くの従業員の生活を救う手段であって、その側面からは評価すべき方策である、とも言えます。

2. 整理解雇の「4要件」

整理解雇だけではなく、解雇全般には合理的な理由が必要であって、合理性のない解雇は不当解雇とされ、多くの裁判例(判例)もあります。その判例の積み重ねが、解雇にかかる紛争の判断基準の大きな部分も占めます。
整理解雇に対しては、「整理解雇の4要件」という基準があります。多数の判例によって確立されているものです。
@ 経営上の必要性があること
A 他の回避しうる手段を尽くすこと
B 整理解雇が合理的であり、その基準の適用も公正に行われること
C 労働組合または労働者との協議を尽くすこと

@の経営上の必要性については「@ 企業の維持存続が危ういほどに差し迫っている程度」「A 前記@に至らないまでも企業が客観的にも高度の経営危機下にある程度」「B より緩やかに企業の合理的運営の必要上やむを得ない事由のある程度」の概ね三説に分かれます。
必ずしも見解が統一されているとは言えないようですが、@の説をとると、使用者にとっては倒産ぎりぎりかも知れず、酷であるように思われます。

Aの解雇回避手段の例として挙げられるのは次のとおりです。
@ 役員の賞与・報酬の不支給・減額の措置
A 上級管理職の賃金の減額、手当のカット
B ベ・ア、昇給の停止
C 新規採用の停止
D パート、臨時社員などの雇止め、解雇
E 残業・休日労働等の削減
F 配置転換・転勤、出向、派遣、転籍などの人事異動
G 希望退職者募集、退職勧奨
この中には、中小・零細企業では困難なものもあるでしょう。

Bは整理対象となる従業員を選定する際の合理性を言います。使用者の恣意を排除するためです。次のものが挙げられます。
@ 従業員の能力を基準として劣る者から整理する
A 解雇によって従業員の生活が被る打撃の少ない者から整理する
B 主観的判断が入る余地を少なくし公平に基準を適用する

Cは整理解雇を進める上での手続きが妥当であったか、を問うものです。
労働組合ないし労働者(代表)に対して、人員整理の時期、規模、方法等について説明し、労働者側の納得を得るよう努力したか、ということです。

3. 「4要素」説

「整理解雇4要件」という場合、「要件=必要な条件」であるため、4つの要件を充たして解雇の合理性が成立する、という意味になります。
これに対し、「各々の要件が存在しなければ法律効果が発生しないという意味ではなく、個別具体的な事情を総合考量して判断されるべきである」とする「4要素」説というものもあります。過去、実際にこの説に立脚した判決が出たこともあり、経済・財政的に苦境に立つ企業にとっては、若干でも注目したいところです。

4. 法源

裁判官が裁判を行う際に基準となるものを「法源」と言います。我が国においては、判例は必ずしも法源とはならない、という立場が取られてきたようですが、比較的「法源性」の強い判例もあり、「整理解雇4要件」もその一つです。「4要素説」の立場をとる判例は、いずれも下級審(地裁、高裁)のものであり、いわゆる法源性は、まだ弱いと言って良いでしょう。

しかし、4要件の中でも重視されるものの一つとして、解雇回避努力としての配置転換・出向がありますが、これは多くの中小企業にとっては難度が高い、もしくは不可能な場合もあります。
「4要素説」の動向は、今後注視されるものと考えられます。


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 ● 人事異動

  「人事異動」は、多く職位や職種、勤務地、所属部門等の変更の意味で使用される用語です。専門的には企業内人事異動と企業間人事異動とに大別されます。企業内人事異動には、「配置転換(配転)」「転勤」等がありますが、長期(概ね3カ月以上、海外の場合には数カ年にわたる場合もある)の出張も転勤に準じた扱いが必要とされる面もあって、「出張」も含む場合があります。企業外人事異動には、在籍出向、転籍があります。近年増えている「労働者派遣」は、籍を派遣元に置いたまま他社へ赴いてその指揮命令下で就労するという特殊な形態であるため、両者の中間的な(性質をもつ)ものと言って良いでしょう。多くの企業で日常起こりうる「配置転換」について記述します。

1. 配置転換には本人の同意が必要か?

一般的には日本の場合、労働契約は「使用者の命じる業務を使用者の命じる場所で行う」という合意が成立している(「包括的合意」といいます)ものと言われてきました。そうであるならば、少なくとも正社員の場合には、例外を除いて従業員をどの場所(勤務先)において、どの部署で、どのような業務に従事させるかということは、使用者の裁量による、というのが原則になります。
この「包括的合意」が成立している場合には、配置転換のたびに従業員本人の同意を得る必要はないこととなります。

しかし、「一般論」に対しては常に「例外」があり、また時代の移り変わりとともに考え方や実際の行為の習慣も変わり得るものであるため、そうとばかりは言い切れないこともあります。

使用者が本人の合意無く従業員を配置転換させ得るのは、使用者の裁量権に基づくものですが、その権利も「濫用」は認められません。
たとえば、同居の親がいて、その親が障害を抱え、その従業員には代わりに親の世話をする兄弟姉妹等がいない状況を知った上で、住居の移転を伴う転勤や出向を命じた場合に、これを無効とした裁判例があります。


2. 職種を限定した労働契約

専門的な職種には該当することも多いのが、採用時に職種の限定をして雇い入れる場合です。
労働契約書の多くは、採用時の職種(従事する業務)に「○○職」「○○担当」などと記載する場合が多いと思われますが、必ずしもその記載がすべてと言い切れないこともあります。契約自体は書面によることなく成立すると解されていますし、労働基準法も、労働契約書に労働条件を記載することまでをも求めておらず、重要な労働条件を「書面で明示するべき」旨を定めているだけです。

職種限定契約であったかどうかは、当事者の一方がそう解釈していても、もう一方の当事者は逆に解釈していた、という例もあります。このようなこともあるので雇う側も雇い入れられる側も、契約締結時に相互に確認し、特に職種限定の場合にはその旨を書面に明記しておく方が賢明です。
なぜならば、職種限定契約の場合、職種の変更を行う際には本人の同意が必要であると考えられるからです。

ただし、この場合も例外が一切無いわけではなく、経営危機下においてその職種部門の縮小または廃止が必要となる場合においては、本人の同意は不要であり、「同意しないこと」が権利の濫用とされた例もあります。

3. 勤務地を限定した労働契約

勤務地を限定した労働契約も、その勤務地を変更する場合には、原則として従業員本人の同意が必要となります。この場合も、当初の募集文面や契約締結当初の契約書や労働条件通知書において記載された勤務地が、すなわち「勤務地限定の証拠」であるとは限りません。
職種においても同様のことが言えますが、訴訟等第三者の裁決を仰ぐ際には、その企業における実態(異動の実態)や就業規則の規定などから総合的に判断されます。

また、職種の件と同様に、その勤務地内における事業場が経営上の理由で存在できない状態になった場合や、大幅に規模縮小がなされた場合には、使用者の側にその勤務地内における就労を確保すべき義務はない、と考えられます。

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 ● 年次有給休暇の「時間単位」での取得

   2010(平成22)年4月1日施行予定の改正労基法では、メインテーマと目されるのは月60時間を超える時間外労働の割増率の件と考えられますが、「時間単位年休」も、実務的には軽視できない事項です。官公庁においては以前から実施されており、たとえば子供の送り迎えや役所への各種届け出、銀行などでのちょっとした用事を足すのに利用されている模様です。通勤時間の短い者にとっては、1日の年休や半日年休を取るほどではない場合に、たとえば「2時間」の遅参を年休処理してもらえることができれば便利、との感覚もあるでしょう。この一見便利な時間単位年休も、実務的な観点からは、けっこう煩雑な側面がありそうです。

1. 背景

年次有給休暇というものは、「日単位」で考えられるものであり、その「日」というのは、午前0時から24時までの24時間(=1日)をいいます。この「日単位」で取得するという考え方が原則であって、その原則自体は今後も変わらない、というスタンスを行政庁も維持するものと考えられます。

しかし、年次有給休暇の消化実績はなかなか上がらないということ、そして、それにはそれぞれの企業の事情や、個々の労働者の個人的な考え方が様々にミックスされて、年休を取得しない(あるいは取得できない)実態に至ると考えられています。そこで、現場の仕事に支障のないようにもっと短い単位で休業できるような方法を考案したものである、ともいわれています。

この時間単位年休の前に、既に「半日年休」が一定の条件の下に認められています。これについては、原則としての「日単位」という考え方があるため、法は、「使用者は労働者に(年休を)半日単位で付与する義務はない」という表現のもとに、「使用者が認めた場合に、半日単位の付与をしても法違反にはならない」という立場を取ります。

この半日単位年休を拡大的に適用するのが、時間単位年休である、とも考えられます。

2. 時間単位年休は何時間で「1日」となるか

年次有給休暇は「日単位」で管理されます。付与する際には「今年度付与日数1  2日」などと表現するでしょうし、残日数についても「18日」などと記載するでしょう。「半日年休」の場合でも、「0.5日」という考え方で済みます。1日が何時間なのかを意識する必要はありませんでした。

たとえば、年休を取る(はずだった)日に、突然やむを得ない事情が発生し、11時に出社して実働6時間を終えた後退社した場合、その日は年次有給休暇を取得しなかったこととなります。それは、あくまでも年休が日単位(0時から同日24時まで)で付与されるものだからです。この日は「6時間勤務」したことになります。

ところが、時間単位年休の制度を適用すると、年休の管理が「日単位」だけでは済まなくなります。時間単位年休の最低取得単位を1時間とすると、その時間単位を積み重ねた時間数がどれだけになれば「1日」とするのかが明らかでなければなりません。 
たとえば、1日の所定労働時間が8時間の場合には、考えやすいのですが、そうシンプルなケースばかりでもありません。
  1. 1日の所定労働時間が7時間30分の場合
  2. 1日の所定労働時間が一定ではない変形労働時間制の場合
などの考え方が明らかでなければなりません。

現時点においては、基本的に「1日の所定労働時間数を下回らないものとしなければならない」という省令案に沿って考えるならば、
1. の場合は7時間30分を上回る「8時間」ということになる可能性が高いと思われます。これは「時間単位」という表現から、1時間未満(たとえば30分)の単位で年休取得をすることは求められないものと考えられるためです。
2. の場合には、変形期間中の平均所定労働時間とするのが妥当と考えられるでしょう。

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 ● 2010年4月からの36協定特別条項

   残業(時間外労働・休日労働)を行うためには、就業規則にその定めをするほか、36(サブロク)協定を締結した上で、それを所轄労働基準監督署長へ届け出なければなりません。これに対する違反には罰則が適用されます。その36協定による場合であっても、時間外労働には上限が定められており、1カ月では「45時間」、1年間では「360時間」(一部の変形労働時間制においては例外有り)を超えることは原則としてできません。しかし、この原則に対する例外事項となるのが、「特別条項」といわれるものです。36協定においてこの「特別条項」を盛り込むことにより、1カ月について45時間を超え、あるいは1年間について360時間を超える時間外労働を命ずることができます。2010(平成22)年4月1日施行予定の改正労基法には、以下の事項があります。@ 1カ月45時間を超え60時間までの時間外労働に対する割増賃金率については、2割5分を上回る労使協定を締結する努力義務を課す。A 1カ月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は、5割増とする(引き上げ分の割増賃金の支払いに代えて有給の休暇付与も可能)。以上の法改正に対して、当面はすべての企業が同じ対処を行わなければいけないわけではありませんが、1カ月45時間を超える時間外労働が見込まれる場合には何らかの対応が必要です。

1. 適用対象企業

改正法の対象となるのは、原則として全企業ですが、中小企業については当分の間(3年間の予定)、上記Aの部分が猶予されます。
ここで「中小企業」というのは、以下のものを指します。

(小売業の場合)
「資本金の額もしくは出資金の総額が5千万円以下」または「常時使用する労働者数が50人以下」

(サービス業の場合)
「資本金の額もしくは出資金の総額が5千万円以下」または「常時使用する労働者数が100人以下」(卸売業の場合)「資本金の額もしくは出資金の総額が1億円以下」または「常時使用する労働者数が100人以下」

(その他の業種の場合)
「資本金の額もしくは出資金の総額が3億円以下」または「常時使用する労働者数が300人以下」

 しかし、@の「1カ月45時間を超え60時間までの時間外労働に対する割増賃金率について、2割5分を上回る労使協定を締結する努力義務」には猶予措置がなく、中小企業といえども「特別条項付の36協定」を締結する際には何らかの対処が必要となります。

2. 努力義務

 上記の「1カ月45時間を超え60時間までの時間外労働に対する割増賃金率」に関しては努力義務であるため、2割5分を上回る率を定めなかったからといって、それだけで罰則を受けるわけではありません。とはいえ、これを全く無視して何らの検討も努力もしないことには問題があるというのが法の立場であるように思われます。

 これについては、長時間労働を回避するために労使共に対策を検討し、結局不可能である場合には、協議した事実と割増賃金率を上げることのできない事情・理由などを記録するなど、労使協定に至るまでのプロセスを重視してその後につなげる姿勢を表現するなどの方法も考えられるでしょう。

3. 変革

 一部の財務的に恵まれた企業を除けば、人件費が大きな負担としてのしかかっていることは事実です。
 人間は多くの場合、長い間にできてきた習慣を変えることの難しい生き物ですが、工夫を凝らすことによって大きく成長してきたことも、また事実です。単に「時間を減らせ」と唱えるだけでは、職種や個人によってかえってモチベーションを低下させる場合もあるでしょう。

 自社の努力だけではどうにもできないケースもあると思われますが、仕事の流れや方法を見直して、それによって総合的に労働時間を短縮することができれば、それを通じて人の能力も向上するでしょう。外部環境が変化する際には、いろいろな対応が必要とされることもあります。
 もし可能であるならば、特別条項を用いない協定を締結するのが望ましい方向であると思われます。
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 ● 労働時間と賃金の端数処理について

    多くの企業では、労働時間の記録と管理のためにタイムカードが使用されています。タイムレコーダーで打刻される始業時刻(必ずしも仕事の開始時刻とイコールであるとは限りませんが)と終業時刻との差、および休憩時間から1日の実労働時間を計算していくことになります。そのタイムカードの各日の欄に手書きで時間数が記入されている例が見られますが、この日ごとの労働時間は、残業時間管理のために必要であるために書かれているものであったり、事実上日ごとの労働時間の一定しないパートタイマーの総労働時間を計算するためのものであったりします。この記入されている労働時間の計算方法に誤りのあることも少なくありません。

1. 残業時間の端数は、どこまで切り捨てて良いのか

時間外労働時間を計算する際に、1日ごとにたとえば30分未満の端数を切り捨てて、計算しやすい時間にまるめ、それを1カ月分合計して労働時間とそれに基づく賃金の計算をしても良いのか、という問題があります。
  そのような取扱いをする理由としては、概ね以下のようなものが考えられます。
  1. 30分未満の残業は、仕事の後片付け的なものである。
  2. 遅刻や早退の場合も30分未満はカットの対象にしていないので、30分未満の残業を支給対象にしなくても、従業員の不利にはならないと思われる。
  3. 1分単位や5分単位で残業手当を支給するのは煩雑である。
2. 賃金の「全額払いの原則」

労働基準法においては賃金の支払いについて「5原則」というものが定められており、そのうちの一つに「全額払いの原則」があります。たとえば20分の端数時間について、それを切り捨て、その結果20分相当分の賃金が支払わなかったとすると、それはその分の賃金不払いとされます。原則的には、たとえそれが5分でも1分でも労働時間は労働時間であり、残業は残業である、とするのが、法の立場です。


3. 基本原則・・・端数処理は月単位で

毎日の残業時間については、1分単位で計算するのが原則であり、そのようにして集計した1カ月の残業時間の合計に1時間未満の端数がある場合には、「30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げる方法」については労働基準法違反としては取り扱わない、ということとされています。
(昭和63年3月14日 基発第150号)

毎日の残業時間について30分未満は切り捨て(30分以上1時間未満は30分に切り捨て)のような端数処理を認めれば、1カ月の合計では、場合により10時間の労働時間が切り捨てられる場合もあり得ます。

「30分は大まかすぎるから15分刻みではどうか?」という質問を受けることもありますが、同じ理由で法に反します。

多くの場合、細かい時間を積み上げていくのが煩雑である、というのが実務的な立場からの理由ではないかと思われます。手計算の時代ならば、確かに煩わしいことでもあります。
しかし、表計算や給与計算などのソフトウェアを活用すれば、計算の部分はソフトに任せることになるため、1日ごとにまるめるという余分な思考がなくなり、そのまま合計した方が合理的でもあります。

4. 賃金の端数処理

 一賃金支払期間の賃金支払額に100円未満の端数が生じた場合に、50円未満の端数を切り捨て、50円以上100円未満を100円に切り上げて支払うことは、労基法違反とは取り扱われません。(昭和63年3月14日 基発第150号)
ただし、この取扱いをする場合は、その旨就業規則に規定する必要があります。
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 ● 雇用保険の失業給付と離職理由について

    従業員が退職する際に、「すぐ失業手当がもらえるように『解雇』にして欲しい」と言う場合があります。また、昨今の不況時などにはやむを得ず雇用調整を行う場合があり、その際に「離職理由」について、トラブルになる場合もあります。これらは、「会社の倒産」「解雇」等による離職の場合の方が、「自己都合」によるよりも、失業給付の条件が良いからですが、解雇でもないのに「解雇したように」離職証明書を作成したりした場合、当人が失業給付の不正受給に問われ、また会社もそれに荷担したと見なされて、連帯して給付金を返還(最高3倍の金額)しなければならないこともあります。後々のトラブル防止のためにも、離職理由については間違いのないようにする必要があります。

1. 「特定受給資格者」と「特定理由離職者」

従業員が離職した際に、その「離職理由」が「倒産・解雇等により再就職の準備をするための時間的余裕がなく離職を余儀なくされた失業給付の受給資格者」を「特定受給資格者」といいます。また、単に「倒産」「解雇」というだけではなく、いわゆる本質的には自己都合ではなく使用者側に原因がある事柄の中から限定的ではありますが、ほかの離職理由も含まれます。これに該当する場合は、「特定理由離職者」といいます。

これは、離職証明書を事業主がハローワークに提出する際に、離職理由欄(右側)にたとえ「自己都合・・・労働者の個人的事情による」旨の記載をし、労働者がその理由に「異議のない」旨の記載をしたとしても、離職票を労働者がハローワークに持参した際に「実は異議がある」ことを表明すれば、ハローワークは「どちらが真実なのか」を調べることとなり、事実上「特定受給資格者」に該当することが判明すれば、その資格が認められます。この場合には、自己都合による場合よりも手厚い給付を受けることができます。

2. 特定受給資格者の「判断基準」

(1) 「倒産」等により離職した者
@ 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等) に伴い離職した者
A 事業所において大量雇用変動の場合 (1か月に30人以上の離職を予定) の届出がされたため離職した者及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
B 事業所の廃止 (事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者
C 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

(2) 「解雇」等により離職した者
@ 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者
A 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者
B 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかった月が引き続き2カ月以上となったこと等により離職した者
C 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)
D 離職の直前3カ月間に連続して労働基準法に基づき定める基準に規定する時間 (各月45時間)を超える時間外労働が行われたため、又は事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者
E 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者
F 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者
G 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記Fに該当する場合を除く。)
H 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者及び事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の措置を講じなかったことにより離職した者
I 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)
J 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3カ月以上となったことにより離職した者
K 事業所の業務が法令に違反したため離職した者

3. 特定理由離職者者の「判断基準」

(3) 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)(上記「特定受給資格者の範囲」の(2)のF又はGに該当する場合を除く。)(※)

(※)労働契約において、契約更新条項が「契約の更新をする場合がある」とされている場合など、契約の更新について明示はあるが契約更新の確認まではない場合がこの基準に該当します。

(4) 正当な理由のある自己都合により離職した者
@ 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者
A 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者
B 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の介護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者
C 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
D 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者
@)結婚に伴う住所の変更
A)育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼B)事業所の通勤困難な地への移転
C)自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと
D)鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等
E)事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避
F)配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避
E その他、上記「特定受給資格者の範囲」の(2)のIに該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等


注)上記のうち(3)(4)については、受給資格に係る離職の日が平成21年3月31日から平成24年3月31日までの間にある方に限り、所定給付日数が特定受給資格者と同様となります。

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